珠洲になくてはならない会社であるための挑戦/株式会社三百苅管工

はたらく
  • LINEで送る

人々の生活を表で支えている会社もあれば、裏で支えている会社もあります。
珠洲市で、人々の暮らしに欠かせない「水と空気」のライフラインを支えてきた株式会社三百苅管工。創業以来60年近くの間、地域から必要とされ続けています。
今回は、こうして地域から頼りにされる会社のウリや今後の展望などについて、代表取締役の三百苅 卓明さんにお話を伺いました。

株式会社三百苅管工の代表取締役・三百苅 卓明さん。気さくで笑顔が素敵な方でした

「水と空気」のライフラインを支える職人集団

―ふだんのお仕事内容はどういったものですか?
一言で言うと、生活に必要な「水と空気」のインフラ設備の工事をする会社ですね。
例えば建物には、キッチンやトイレにきれいな水を供給する給水設備、汚れた水を送り出す排水設備、室内環境を快適に保つエアコンなどの空調・冷房設備があり、学校や病院などの大きな施設になると、それらの設備全体に水や空気を送り込むシステムとしての機械設備があります。人々が日々安全かつ快適に過ごせるように、これら建物すべての配管・配線をしっかりとつなぎ合わせ、管理する仕事と言うとわかりやすいかもしれないですね。

建物内に水や空気を供給する配管・配線は、ふだん目につかないが大事なインフラ

―6階建ての建物だとしたら、1階から屋上まですべての配管・配線をつなぐということですか?
そうですね。そして、こうしたライフラインの定期的な点検やメンテナンスを行うことも大切な仕事です。ちなみに私は「三百苅管工」のほかに「のと電設」という系列会社も経営していて、三百苅管工では主に「水と空気」の設備工事、のと電設では「電気」の設備工事と消防設備の工事・点検を行っています。
社員は基本的に毎日、工事現場に行き、これらの設備の施工や点検をしています。

−こうした建設工事をするにあたり、どんな資格が必要ですか?
資格は、いっぱいあるんですよ。その中でも「施工管理技士」という国家資格の1級を取得できればさまざまな工事に携わることができます。施工管理技士の資格も建築・管工事・電気工事などに分かれており、どれかに合格できれば、その分野の工事の管理を担当できます。
いろいろな資格を取るにあたって、年に何回か講習会や試験があります。会社としては講習会と仕事のスケジュール調整や受講料の全額負担をしています。今高卒で働いている子もいますが、高校生で取れる資格もあります。働く上で最低限の資格は必要ですから、新しく入った若い方には積極的に資格を取ってもらっていますね。

公共事業を中心に、地域に根ざした仕事を受ける

−主なお客様・お取引先はどちらですか?
主に2つあって、1つは自治体からの公共事業、もう1つは民間事業です。割合でいうと、公共が7割、民間が3割くらいですね。わが社は奥能登中心に活動していて、基本は珠洲市・輪島市・能登町・穴水町、この奥能登にある4つの市と町が事業エリアです。

−1年のなかで忙しい時期はありますか?
公共事業だと、年度末までに工事を終わらせないといけないことが多いので、だいたい1月から3月ごろが忙しく、4月から6月ごろが比較的余裕がある時期です。民間事業はその年によって変わってきますね。

―現在進行中の工事があれば教えてください。
現在、珠洲市で新しい保育園を建設中で、わが社は給排水や空調・冷房の設備工事を担当しています。現場には自分たち以外の業者も関わっていますので、調整しながら工事をしています。

珠洲市内で建設中の新しい保育園。2023年3月完成予定で工事が進む

床暖房の施工現場。断熱材の中に樹脂の管を巡らせて温水を通す

社長になった「今」、先代から受け継いだ想い

−ここからは社長ご自身のことを伺います。前社長から会社を受け継ぐまでの経緯を教えてください。
私も今年で60歳になったのですが、2019年に先代の父が高齢で体調を崩して寝込むようになり、これはまずいなということで、翌年に代表取締役を代わりました。本当は私が40歳くらいで代わっておけばよかったのですが。

−社長になって会社を継ごうという意識は以前からあったのですか?
先代に「後を継げ」とずっと言われ続けていたので、無意識に継ぐことが当たり前だと思っていました。高校を卒業後、珠洲を離れて設備工事の技術を学ぶ専門学校に行き、そこを卒業した後は金沢の会社に3年間修行として勤めました。その後は珠洲に戻り、先代の下でずっと一緒に働いていました。20歳で入社してから40年ほど経ちました。

−先代から受け継いだ想いや大切にしたい教えはありますか?
「珠洲になくてはならない存在にならんとダメやよ」と。これだけは言われ続けてきましたね。お客様から求められる会社でなければダメだと。

−社長が思う、今の会社のウリは何ですか?
2つあります。1つはもしもの時の「機動力」、つまりスピードです。他社よりも職人の人数が多いので、他社より早く仕事を終わらせることもできます。特に地震や凍結などで水道に支障が出たりすると、復旧のために寝ずにやらなきゃいけないこともあります。そんな時にすばやく動いて、地域に密着した仕事ができる会社です。

地域の暮らしを守るため、すばやく現場に駆けつける

それからもう1つは「技術力」ですね。施工管理技士の1級を持っている職人が多いので、比較的大きい規模の工事も請け負うことができます。また、わが社は管工事で建設業許可のAランクを持っています。年に1回、経営事項審査というものがあるんですが、基準を満たした会社だけがAランクになれます。このような技術力を活かし、職人の現場作業を通じて信頼されることで、仕事を増やしていきたいです。

1級管工事施工管理技士として保育園の工事現場をまとめる高橋さん(右)。トイレ床下の狭いピット(空間)にぎっしりと配管する作業が大変だったという

未来に向けて、新しい仕事をつくる

−現在の三百苅管工の課題は何ですか?
まず人手不足です。人がいないことには何も始まらないですからね。今、会社の平均年齢がなんと57歳です(笑)。これをせめて40代くらいには戻したいなあと思っているんです。だから若い人材が欲しい。そこで、昨年まで「のと電設」の総務部長をしてくれていた藏さん(現在は独立し、社外コーディネーター)といっしょに、未来へ向けた取り組みを進めています。

三百苅社長(右)を支える蔵 雅博さん(左)。旅館などのサービス業の実務経験もあり、豊かな発想で会社に新しい風を吹き込む

−どんな取り組みをされているのですか?
まず、若い人を採用するために、ここ数年で2つのことに取り組んでいます。
1つ目はリクルートブックやホームページの作成です。今までは簡易的なホームページしかなく、「何をしている会社なのか、どんな方に入って欲しいのか」ということを伝える手段がない状態でした。そこでホームページや紙媒体を見直しました。
その結果、2022年度には10代から40代が4名入社してくれたんです。その中には藏さんのようなサービス業出身の方も転職してくれています。わが社は営業部門がなく、現場の職人を含めて会社全体が営業マンという感じです。そんな中、職人として現場のことを熟知した上で、お客様への接し方や言葉づかいという点でサービス業のスキルも持つ人材が、今後増えてほしいと思います。
2つ目は、地元の高校に行き、高校生に話をする機会を作っています。市内の飯田高校で「地元企業を知る会」というのがあるんです。それに12社ほど枠があり、これに参加し始めました。

−どんな人材が会社に入ってきて欲しいですか?
まずは人間性ですね。資格がなくてもまずは入社してもらい、自分のスキルを磨いてもらえればよいと思っています。人間性というのは、例えば面接であれば笑顔を見ます。面接していく中で顔に出ますから。大切なのは、スキルよりも人としての部分ですね。
それから、社員が新しい人材を連れてくるような会社だったらいいなとも思います。今はまだ社員の紹介で採用した人はいないですが、一番会社のことをわかっている社員に会社の内容や雰囲気を伝えてもらって「入ってみたいな、一度見学に行ってみようかな」と思ってもらえる人がいるとうれしいですね。

−最後に、これからの展望をお聞かせください。
将来的にもライフラインの仕事は絶対残していきます。ただ、公共事業がどんどん減っているので、今後は民間事業もいろいろ展開していきたいです。
民間事業として今行っているのは、アパートの建設や経営です。そして今年からの新事業として、実はわが社が所有している空きホテルの物件を改築し、人手をかけずに自動でチェックインできるような「スマートホテル」にしようと計画しています。この最先端のホテルを作るにあたって、給排水や空調などの設備工事も当然あるわけですから、それらに社員が関わることで、世の中の流れを取り入れた新しい仕事を作っていってほしいですね。

会社所有の空きホテルを「スマートホテル」に改装するプロジェクトが進行中

(以上、インタビュー)


時折冗談を交えて笑いを取りながら取材に応じてくれた三百苅社長。ジョークを言う時のニコッと笑う笑顔が印象的でした。
「スキルよりも人柄が大切」と仰るように、現場監督やコーディネーターの方々も取材中に笑い話を交えながら場を盛り上げてくださり、人が好きな様子が伺えました。人を大切にする想いは変えずに、時代に合わせて仕事のやり方を変えて進化していこうとする前向きな地元企業だなと感じました。
「まずは、会社を見学に来てほしい。実際に見て、自分がやってみたいか決めてほしい」
そう語る社長はイキイキしていて、未来の若者を楽しみに待っているようでした。
ぜひ一度、三百苅管工を見学してみませんか?

珠洲おしごとライター 葛西 さくら
取材日:2023年1月17日
※「珠洲市実践型インターンシップ2022」として実施