自分の時間を大切にできる 海のそばの老舗ホテルの仕事/ホテル海楽荘

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すぐ目の前に日本海が広がり、水平線に沈んでいく夕日や、冬の風物詩・波の花を見ることができる「ホテル海楽荘」。何といってもここの売りは、その日に水揚げされた新鮮な魚を社長自ら仕入れに行き、食事で提供してくれること。
ホテル海楽荘の代表取締役・池田 幸雄さんに、仕事へのこだわりやこれからについて話を伺いました。

ホテル海楽荘代表取締役の池田 幸雄さん。生まれも育ちも珠洲市

―ホテル海楽荘の仕事を始めたきっかけを教えてください。
22歳の時にここの海楽荘に入りました。それまでは海楽荘の横で民宿をやっていましたが、もともと海楽荘を経営していた人が輪島に行くため「この建物を買ってくれないか」ということで、右も左も知らない22歳で買い取ったのがきっかけです。その頃、冬場の仕事は出稼ぎをしていましたが、いつまでも出稼ぎをすることができないので、この海楽荘に入り年間を通した仕事をやりたいと思い、入りました。

池田さんがこの宿を引き継いで40年以上になる

―どんな売り込み方法を取ってこられたのですか?
当時は全くの素人だったので、売り込みのしゃべり方も誘客の仕方もわからず、旅行業者のところで静かに1時間ほど座っていて「お前何しにここに来とるんや?」と言われたこともありました。
昭和56年くらいですが、名古屋観光の買い物ツアーという企画に参加したことが海楽荘の初めての企画になりました。それから大阪の天王寺にある近畿日本ツーリストの旅行営業所で、冬の能登半島を売ろうという企画に参加しました。この企画は「食道楽20品」というタイトルで能登の食材20品を提供して行ったところ、旅行営業所に1日400人から500人ほどのお客さんがやってきて営業所は右往左往だったとか。その後は雪が降って交通規制がかかっていても、お客さんが必ず海楽荘に来てくれるように。和倉温泉や加賀温泉で働く人たちに「なんで海楽荘にはいつもバスがおるんや」と不思議がられました。
それ以降、大阪・名古屋以外でも営業をするようになりました。営業マンは私だけですから、北海道から沖縄まで幅広く営業するようになりました。飛び込みでパンフレットをもって海楽荘を宣伝し、お魚をメインにアピールして今まで営業をやってきました。

―メインのお魚を毎回、自分で取りに行かれるのですか?
蛸島漁港(珠洲市)の市場へ行き、魚屋に交じって買わせてもらった魚をお客さんに提供しています。普通の旅館は、魚屋からすぐ調理できる魚を仕入れるのがほとんどなんです。私の場合は市場で並んでいる魚を自分で選んで、水洗いをし、魚を切り調理して提供しています。またお客さんには「蛸島で今朝水揚げされた魚ですよ」と説明をしています。ここが他の旅館と違うところですね。冷凍のマグロや甘えびだとか、そういう食材はどこにでもあるものですから、そういうのではなく能登の食材を食べてほしいという想いがあります。

地元の漁港のセリで池田さん自身が仕入れる新鮮な魚

―季節ごとに違う魚のプランはどんなものがありますか?
今年の夏は「岩ガキづくし」というプランを用意しました。これが大変お客さんに好評でしたね。このプランでは岩ガキの料理を5種類提供しました。生ガキやホイル焼き、カキフライ、カキを使った治部煮などといった料理です。ホームページには詳しく載せていなかったので、お客さんは料理の内容を聞いてびっくりされていました。
また、秋のシーズンにはマツタケ、冬には加能ガニやブリといった海の幸、春には海藻のしゃぶしゃぶなど、季節ごとの食材を使ったプランを作って提供しています。

「食道楽の宿」として、能登の新鮮な食材にこだわる

―ホテル海楽荘のこだわりを教えてください。
やはり能登へ来たら、市場で仕入れた能登の新鮮な魚を食べてもらいたいです。
自分で仕入れと料理をするので、団体客の場合は宴会場にまな板を準備し、お客さんの目の前で刺身をつくっています。こういう提供の仕方は北陸三県でどこにもないと思います。目の前で刺身をつくるからこそ、お客さんのご希望に合わせて切ることもありますね。

―ホテル海楽荘の見どころは?
そうですね、旅館の目の前が日本海なので、この海岸を散策できるところです。他の旅館では部屋から海を見ることはできますが、実際に海岸を歩けるところはほぼないと思います。また、夕日が真正面に沈んでいくので、夕日がきれいなときは館内放送でお知らせしています。そうすると食事中でもお客さんが夕陽を見に外へ出てくるんです。口コミでもよく「夕日が沈むのを見れてよかった」という感想をいただきます。こういう立地が最大の武器ではないかと感じています。

晴れた日には、水平線に沈んでいく夕日を眺めることもできる

―最後に今後どんな風にこのホテル海楽荘を続けていきたいですか?
今まではお客さんを呼び込む拡大路線を取ってきましたが、私自身の年齢や体力を考えると、これからはある程度規模を縮小していこうと思っています。例えば1日10組様限定などといったやり方にしていかなくてはいけないかと感じています。お値段を上げることなく、より良い新鮮な食材を使用しながら、お客さんのご要望に応じたプランを企画していきたいと思っています。
また、スタッフも募集しており、若い人が来てくれるとありがたいですね。初心者の方も大歓迎です。朝晩だけ配膳や掃除などの仕事をしてもらい、日中の空いている時間は、釣りや散策など、好きなように過ごしてもらえればいいです。海を見ながらボーっとするだけでもいいですし、魚をおろすのを勉強したい人がいればそういう体験をしてもらってもいい。三食ご飯がついて住み込みで働くことができます。いいところだと思いますよ。

すぐ目の前に広がる日本海。仕事の合間は自分の好きなように過ごせる

(以上、インタビュー)


池田さんがこだわりをもって経営されているホテル海楽荘。
海が身近に感じられ、地元の市場で仕入れた新鮮な魚や、日本海に沈む夕日を眺められるロケーション。仕事をしていても自分の時間を大切にでき、自由な働き方ができる場所。
そんな魅力やこだわりをいっしょに感じてみませんか?

珠洲おしごとライター 林 千尋(金沢学院大学)
取材日:2019年8月20日
※能登キャンパス構想推進協議会「奥能登チャレンジインターンシップ」として実施

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