能登半島のさいはて・珠洲市でつくられる、「珠洲焼」をご存知でしょうか?
珠洲焼は、12世紀後半から15世紀末にかけて現在の珠洲市周辺つくられた、中世の日本を代表する焼き物のひとつです。一時は、日本列島の四分の一を商圏とするまでになりましたが、15世紀後半に急速に衰え、忽然と姿を消してしまったことから「幻の古陶」と呼ばれています。
その後、調査や研究が進むとともに、「幻の古陶をなんとかこの地に復活させたい」と願う地元住民の情熱により、昭和53年、約500年の時を経て珠洲焼は甦りました。
珠洲焼の特色は、鉄分を多く含む珠洲の土を使って成形し、それを1200度以上の高温で焼く「還元焔燻べ焼き(かんげんえんくすべやき)」という技法で焼き上げる点にあります。コーティングの役割を果たす釉薬は使わず、高温で溶けた灰が自然の釉薬となり、素地も炭化して珠洲焼独自の灰黒色の艶を生み出すのです。
また珠洲焼の器は、お酒の雑味を緩和したり、ビールの泡立ちをきめ細やかにしたり、水の浄化機能があったりと、酒器や花器として機能的にも優れています。近年では、和食だけでなく、フレンチやイタリアンで使われることも増えているそうです。
このように深い魅力をもつ珠洲焼ですが、現在若い作家が少なく、次世代の担い手育成が課題となっています。せっかく500年の時を経て復興したのに、このままでは再び「幻の古陶」になってしまうかもしれません。
市内には、作陶技術の習得や陶工の自立を支援する施設「珠洲市陶芸センター」があります。ここでは、薪窯、ガス窯、電気窯、ろ過圧搾機、土練機など作陶に必要な機器がそろっています。
ここでは、気軽に陶芸体験ができる他、より本格的に作陶技術を学びたい方向けに、2年間の研修制度「珠洲焼基礎研修課程」を設けています。
「珠洲焼基礎研修課程」では、2年かけて、プロの陶工を講師に、窯たきやろくろ、手びねりといった基本的な技術や、珠洲焼の歴史など基礎的な知識を学びます。これまで9年間で31人の方が受講し、修了生のなかには、独立して窯をもった方もいます。
珠洲焼のふるさと・珠洲市は、決して生活の便がいい場所とは言えませんが、世界農業遺産に認定されるほどの豊かな里山里海に囲まれ、特徴的な伝統文化が根付いています。また、2017年には初めての「奥能登国際芸術祭」も開催されました。
このように、作陶のための施設も環境も充実している珠洲市。
「田舎暮らしをしながら地域の伝統工芸を受け継ぎたい」
「創作意欲溢れる自然豊かな環境で、ものづくりに没頭したい」
そんな想いをもつ方は、たくさんのインスピレーションを得られそうな創作活動にぴったりなこの場所で、「珠洲焼」作家を目指してみるのもいいのでは?
関連リンク
≫珠洲市陶芸センター
≫珠洲焼基礎研修課程(令和4年度募集要項)