徹底したこだわりで珠洲ならではのピッツァと楽しさを味わえる店/合同会社KANEMORI

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ピザ窯はもちろん、ギターやボードゲームがある店内。
「音楽やボードゲームが好きな人たちが集まるイベントも定期的にやってますね」
自身もギターを弾く兼盛さんが楽しそうに話します。
今や地域の憩いの場となった、イタリアンカフェこだま。
その背景には、珠洲とオリジナリティへのこだわり、そして兼盛さんの気さくな人柄がありました。
お店の魅力、料理人になるきっかけ、そこに込めた想いについて、イタリアンカフェこだまを経営する合同会社KANEMORIの代表・兼盛 康寛さんにお話を伺いました。

自らピザ生地を作る兼盛さん。こだまをオープンして今年で8年目になる

自家製の薪窯でつくるナポリピッツァが魅力

ーまず仕事内容を教えていただけますか?
ナポリピッツァを中心に、パスタやドリア、一品料理などのイタリア料理を提供しています。
ナポリピッツァっていうのはピザのジャンルの1つなんです。縁が分厚く、もちっとした生地が特徴です。それを自家製の薪窯で焼いてお出ししています。

自家製の薪窯で、ナポリピッツァを1つひとつ丁寧に焼き上げる

ー火を起こすのに時間がかかりそうですね。1日のスケジュールはどうなっていますか?
朝9時頃に買い出しに行き、戻ってから薪窯に火をつけて準備します。窯を温めるのに時間がかかるんですよね。休みの次の日だと2時間くらい。11時にオープンして15時まで営業します。夜の部は、17時から22時まで。その後片付けですね。

珠洲らしさとオリジナリティを追求する

ー「こだま」って珍しい名前だと思ったのですが、由来は何ですか?
由来は、私がもともと林業をしていたので、木に宿る精霊の「木霊」です。どう書くかはいろいろ考えましたね。「木霊」だと「霊」っていう字が入って「葬儀場っぽいな」とか。珠洲の「珠」も「たま」って読めるなとか、イタリア語とかも考えたけど、結局ひらがなで「こだま」になりました。

ー思い入れのある名前なんですね。ピザへのこだわりも聞きたいです!
珠洲の食材を使っているのが、こだまの一番のこだわりです。素材を活かすように作っています。「宗玄酒造」さんの酒粕とか、「奥能登ジビエしおかぜファーム」さんの猪肉とか、市内企業とコラボすることもあります。
それから、旬の地元食材を使った期間限定の「珠洲こだまピッツァ」っていうのもあるんですけど、今は「のと115」という椎茸を使ったピッツァを提供しています。これも改良を重ねて美味しくなっていると思います。特にこだまピッツァは、店の名前も入っているので、より美味しく、誰もが食べられる味を目指して作っています。

人気メニューの1つ「こなピッツァ」。「こな」は珠洲で採れる海藻の1つ

ーこのピザが載っている黒いお皿は何ですか?
珠洲焼ですね。真っ黒なのが特徴で、料理が映えるんですよ。お客さんでもある知り合いの作家さんに頼んで作ってもらっています。ここのオリジナリティを出したくて、「こだま」という字や、葉っぱの絵を焼き印で入れてもらっています。
ただ、グラタン皿は珠洲焼ではないです。一度試してみたんですが、珠洲焼は高熱に耐えられないみたいで、うまくいきませんでした。でも、いずれは珠洲焼にしたいですね。

カップも珠洲焼。女性客が多いことから、オシャレなデザインにしたそう

憧れとピザ窯との出会いを経て料理人に

ーもともと珠洲市に住んでいたんですか?
生まれは県内の白山市で、20歳の頃に珠洲市に来ました。祖父が珠洲市に住んでいて、林業をやっていましたので、家業を継ぐかたちで私も林業を始め、祖父が親方をやめてからは親方を十何年かやっていました。

ー林業からイタリアンカフェをやることになったきっかけは何だったんでしょうか?
もともと料理が好きで、小さい時は料理人になるつもりでした。道場 六三郎という石川県出身の料理人がいて、その人に憧れていました。あと、林業をやっていくうちにワインとかピザ窯に出会ったんですよ。それで、自分で木を切り、薪も作って、趣味でピザ作りを楽しんでいました。
林業をしながらも「料理人になりたい」という野望は持ち続けていて、いろいろイメージはしていたので、趣味のピザ作りにかけてみたんです。

ーピザの作り方や薪窯の管理については、どうやって身につけたんですか?
東京に基礎を習いに行って、あとは独学ですね。自宅にピザ窯を作って焼いては近所に振る舞ったりしていました。発酵とかね、難しくて。温度によるし。そういうのは、焼いていくうちに身につけていきました。
その頃はもう子どももいたので、珠洲でやろうと考えて、2015年3月、38歳の時にオープンしました。

ー「自家製の薪窯」と聞いて気になっていたのですが、薪窯も独学で作ったのでしょうか?
地元の大工さんに聞きながら、土台から作りました。薪窯だけじゃなくて、店内の壁紙や床も張ったりして、できる部分は自分でやりましたね。人の技を盗むのが好きで、真似したくなるんです。

ピザ窯は、兼盛さんがDIYで耐火レンガを積み上げてつくったそう

コミュニケーションと逆境を楽しみ成長し続ける

ーこだまを続けている原動力は何なのでしょう?
やっぱり「美味しい」って言われたら嬉しいですね。あと、いろんな人とコミュニケーションをとれて楽しいし、自分を成長させてくれるからいいですね。
林業をやっている時は、同じ作業班の10人としか繋がりがなかったけれど、今はたくさんのお客様とつながれて、音楽やボードゲームが好きな人たちが集まるイベントも定期的にやっていますね。コロナ前は多い時で15人程集まってボードゲームをしていました。若い移住者や外国人も集まってきます。

ーここでイベントをするのはウェルカムなんですか?
やりたいっていう人がいたら、全面協力します。
ちなみに、私もギターを弾くので「こだまギターの会」っていうのをやっています。食べながら、ゆるく、楽しく、盛り上がっていますね。

地域の若者たちが集まる交流の場にもなっている

ーお客さんが多い時、少ない時ってあるんですか?
クリスマスはテイクアウトの注文がすごく多いんですよ。ずらーっとオーダーが並んで、19時までひたすら焼き続けます。それに加えて突然来る人もいるので、なかなか大変ですね。
逆に、雪の多い日なんかはお客さんが来ない時もあります。でも、林業をやっていた頃は雪が降っていても外で作業をしていたので、「これくらいで店は閉められない」って思うんですよね。
だから、コロナ禍の今も、逆にチャンスを見い出すことができる。やりたいと思っていたことは全部、コロナのおかげでできるようになったと思います。

やりたいことが多すぎて人手が足りない

ー新メニューやイベントなど、これから挑戦していきたいことはありますか?
冷凍ピザをインターネットで販売しようかなと考えています。それから、移動販売的なこともできればと思っています。鍵主工業さんの珪藻土ピザ窯があるので、外に出てピザを売ろうかなと。
新しいメニューも考えています。次のこだまピッツァは道の駅狼煙の「おから」を使う予定です。それと、「アランチーニ」っていうイタリアのコロッケがあるんですけど、おからで作ろうかなと。見た目かわいいんですよね。

ーぜひ、食べたいです!じゃあ、これから忙しくなりそうですね!
そうですね。さっき言ったことを全部やろうと思うと、人手が足りないです。今、アルバイトを含めて4人でやっているんですけど、ピザを焼けるのは自分しかいないんです。これだと移動販売しようにもその度に店を閉めることになっちゃうので、ピザを焼ける人が欲しいですね。もちろん焼き方は教えます。

ー最後に、「こだまで働いてみたい!」と考えている人にメッセージをお願いします!
まずは、コミュニケーション能力がある人がいいですかね。あと、何でも楽しみながらやってくれる人。商品開発とかイベント企画とか何でもやらせてあげるので、それらを楽しんでくれる人がいいですね。

お店の外観も親しみやすい雰囲気。アイディアをかたちにしてみたい人にはおすすめ

(以上、インタビュー)


こだまには、年齢、国籍問わず、多くの人が集まります。
「珠洲の魅力は人。人の優しいところ、親しみやすさがいいですね」
そんな兼盛さんも、気さくで、エネルギッシュな方でした。

珠洲の食材を使った料理はもちろん、珠洲焼を器に使うなど、徹底したこだわりから珠洲への想いが伝わってきました。また、こだまは、美味しいピザを味わえるだけではなく、移住者や海外の方などが地域と交流できる場所にもなっています。
兼盛さんの「楽しむ」姿勢は、自身の野望だけでなく、地域のにぎわいにもつながっているのかもしれないと感じました。

珠洲おしごとライター 大塚 理香子
取材日:2022年2月8日
※「珠洲市実践型インターンシップ2021」として実施