珠洲市に支店を構える旅行会社「トラベル愛ランド株式会社」。人口の少ないこのまちに、旅行業の需要がそこまで多いとは思えません。今回は、珠洲での仕事の内容ややりがいについて、代表取締役社長の山口 好範（やまぐち よしのり）さんにお聞きしました。
「トラベル愛ランド株式会社」代表取締役社長の山口 好範さん
－会社を起業したきっかけを教えてください。
高校を卒業後、石川県内の旅行会社に就職しました。営業の仕事をする中で、能登のお客様は1回きりではなく長いおつきあいが大切だと感じました。そして、「お客様に対して質の高いサービスにこだわりながら地元に根付いた仕事をするには？」と考え、自分で独立することにしました。若気の至りというやつですね(笑)。それが起業した1つの大きな理由です。
もう1つは、高卒生と大卒生の待遇に大きな差があることを経験したことです。どれだけ自分が営業でバリバリ回って仕事をとってきて歩合給がついても、大学生の基本給には追い付かないんですよね。そんな社会の仕組みに対する自分自身の葛藤があり、学歴に関係なく一生懸命働いて実績を上げてくれる社員には、やりがいを持って仕事をしてほしいという思いもありました。なので、社員一人ひとりに目標を持ってもらい、目標をクリアすればそのときの会社の経営状況に関係なく報奨金を出しています。
「お客様と長いおつきあい」をしながら「やりがいを持って」仕事ができる会社です
－具体的な仕事内容を教えてください。
大きく２つに分けて、企業や法人を対象にした団体営業と、個人営業をしています。
団体営業は社長さんや幹事さんにヒアリングをし、なるべく要望に沿ったご提案を何個も出して、選んでいただきます。その後に細かく打ち合わせをして、アレンジを加えていきます。個人営業は切符やご宿泊の手配をします。高齢者が多い地域なので、娘さんや息子さんに会いに行くためにチケットを買いにくる方が多いです。今はインターネットで簡単に買えますが、トラブルに巻き込まれるのが嫌でアドバイスが欲しいということが多いですね。珠洲はさいはての地なので、どこに行くにしても移動が必要になってきます。なので地元にある旅行会社、歩いて来れる旅行会社ということで重宝してもらってますね。
路線図やコンピューターを使ってお客様の要望に近づいていきます
－仕事を通じて感じる、珠洲の特徴を教えてください。
金沢は価格が安いほどいいというお客様が多いですが、能登の人は1回の余暇に使うお金が断然高いです。半島という土地柄もあると思いますが、せっかく旅行に出かけるならいいところに泊まりたい、という方が多いですね。また、田舎に行けば行くほどコミュニティがしっかり出来上がっています。例えばご近所さんはみんな知り合いだったり、町内会の集まりも行ったり。若い人々はそういった付き合いをしたくない人が増えているのかもしれませんが…。
－どんなときにやりがいを感じますか。
お客様にヒアリングをし、ご要望に合うようにプランニングをして、実際に行って喜んでくれたときはいつでも嬉しいですね。お客様と接しない仕事も世の中にはたくさんありますが、接してこその喜びがあると思います。もちろんニーズと一致していなかったり、伝達不足だったりでお叱りを受けて、逆に凹むこともたくさんあります。でも「ありがとう」と言っていただけるお仕事をするのは、何よりのモチベーションになりますね。
親しみやすいコンパクトな店構え（2019年12月に近くの建物へ移転）
－会社の基本理念を教えてください。
「情熱・熱意・執念」です。若い人から見れば少し引いてしまうかもしれないのですが…(笑)
情熱は創造性を培い、熱意は人の心を動かし、執念は自らの願望を実現する。この3つがあれば、できないことはないと考えています。旅行業って全部人のモノを使わせていただいているんですね。なので、どうしてもお客様のニーズに合わないことも多いです。しかしそこで諦めてしまうと、なし崩しに諦めることになってしまうので、できるだけお客さんの要望に近づくようにしています。
－若者に一言お願いします。
インターネット上の情報を見ると、旅行業は仕事が大変で給料が安いといわれています。実際その通りなのですが、それ以上にお客様と接することが自分の成長に大きく関わっています。今後の自分の人生設計図を立てたときに、選択肢をお金中心にするよりも、自分の人間力の成長につながるような道を若者には選んでほしいです。
（以上、インタビュー）
地域の人々と深いおつきあいができるトラベル愛ランドは、都会では味わえない環境で働けることによって、人間力の成長に大きくつながると感じました。
人生は一度きり。ぜひ、人とつながることのできる喜びを知ってほしいと思います。
